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2017_12
25
(Mon)14:20

ベートーヴェン チェロ・ソナタ第3番 イ長調 作品69

2018年2月4日(日)、午後7時から豊中市立文化芸術センターでベルギーのチェリストのニコラ・デルタイユ氏とベートーヴェンのチェロ・ソナタ第3番を演奏致しますので、今日はベートーヴェンのチェロ・ソナタ第3番について書いてみようと思います。

2012年5月31日に阿部裕之先生と上村昇さんが大阪倶楽部で第3番を弾かれましたが、ベートーヴェンの雄渾さに満ちた素晴らしい演奏でした。 第3番はベートーヴェン中期の作品ですがピアノとチェロが対等に渡り合いチェロの魅力が発揮されている構想の大きな作品です。 大阪倶楽部での演奏はお二人の演奏家としての魅力が十分に発揮された印象に残る演奏会でした。

さてベートーヴェンのチェロ・ソナタは全部で5曲あります。

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ベートーヴェンはピアノとは異なりチェロには格別の演奏技術はなくデュポール兄弟などとの親交が動機となりチェロ・ソナタを作曲したと見られますが、チェロ・ソナタ5曲はチェロの新約聖書とされチェロ奏者には大切なレパートリとなっております。 ニコラ・デルタイユ氏もCDを出しておられます。

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初期に作品が集中したヴァイオリン・ソナタと比べチェロ・ソナタには初期・中期・後期を代表するような傑作を残しており、弦楽四重奏曲に次ぐ成功を収めたと評価されチェロソナタ5曲は室内楽作品上、重要な作品です。

5曲のチェロ・ソナタのうち最も広く知られているのが中期の「傑作の森」を代表する室内楽の3番です。 これはそれ以前のチェロとピアノのためのソナタが実質「チェロ伴奏付のピアノ・ソナタ」であったのに対して、この3番は歴史的に初めてチェロとピアノが対等な役割を与えられたといえます。

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第3番Op.69は1808年に作曲されたベートーヴェン中期の作品ですが、同時期に作曲された作品に第5交響曲「運命」や第5ピアノ協奏曲「皇帝」、「エグモント」序曲などがあります。 ベートーヴェンが聴覚の異常を自覚し出したのは1801年頃です。 「ハイリゲンシュタットの遺書」という手紙を弟たちに書いて苦しんだ時期もありますが、1808年と言えばその苦しみを乗り越えた後ですので、その中から生まれた第3番は第1番や第2番に比べるとチェロとピアノの掛け合いも自由でベートーヴェンらしい旋律にあふれた情熱的なスケールの大きい作品です。 また第3番はベートーヴェンが愛したウイーン郊外のハイリゲンシュタット村で完成した曲です。

ベートーヴェン チェロ・ソナタ第3番♬~リヒテル(ピアノ)、ロストロポーヴィツチ(チェロ)
べートーヴェン チェロ・ソナタ第3番♫~アックス(ピアノ)、ヨーヨーマ(チェロ)
べートーヴェン チェロ・ソナタ第3番♫~グルダ(ピアノ)、フルニエ(チェロ)
ベートーヴェン チェロ・ソナタ第3番♫~インマぜール(フォルテピアノ)、ビルスマ(チェロ)

また演奏会のチラシができましたらホームページとブログでご案内させて頂きます。



ピアニスト谷真子公式サイト
2017_09
21
(Thu)09:38

ベートーヴェン ピアノソナタ第6番 ヘ長調 作品10-2/Beethoven Sonate fur Klavier Nr.6 F-Dur Op.10-2



ベートーヴェンのピアノソナタ第6番作品10-2は今年の全日本学生音楽コンクールの小学校の部の本選の課題曲の一つですが、3曲からなる作品10のピアノソナタのうちの第2曲にあたります。

作曲年は1796年から1797年にかけてだと思われます。

形式的には4楽章のピアノソナタから緩徐楽章を除いた3つの楽章によって構成され、2楽章がアレグレットとなっている事から、すっきりとした印象の作品です。

作品の中のユーモアの精神はベートーヴェンの師のハイドンの影響かと思われます。

緩徐楽章の省略はベートーヴェンには珍しい事ではなく、その後さらに研究され、後年の作品へと繋がっています。


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2017_08
12
(Sat)09:29

ベートーヴェン ロンド ト長調 Op.51-2

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ベートーヴェン(1770~1827)はドイツの作曲家ですが、バッハの作品が旧約聖書と呼ばれるのに対してベートーヴェンの作品は新約聖書と呼ばれ、日本では「楽聖」とも呼べれております。

ベートーヴェンは1792年7月、ロンドンからウィーンに戻る途中ボンに立ち寄りそこでハイドンにその才能を認められ弟子入りを許可されます。

11月にはウィーンに移住し、まもなくピアノのヴィルトゥオーゾとして名声を博します。

20歳後半より難聴が悪化し遂に1802年にハイリゲンシュタットの遺書を記しますが、ベートーヴェンは立ち直り素晴らしい作品を次々と生み出していきます。

ベートーヴェンのロンドOp,51はソナチネ教則本にも収められており、小さいお子さんでも弾かれる曲ですが、その簡潔な美しさを表現しようとすると大変難しい作品です。

Op.51-2は1798年から1800年にかけて作曲され、出版は1802年にアルタリア社から出版されました。




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2017_03
01
(Wed)10:18

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第18番 変ホ長調 作品31-3/Beethoven Sonate fur Klavier Nr.18 Es-Dur Op,31-3

ベートーヴェンのピアノソナタ第18番作品31-3は1802年にベートーヴェンが完成したピアノソナタですが、第4楽章の主題が狩猟用の角笛を思い起こさせる事から「狩り」という愛称でも親しまれております。

1801年に着手され16番、17番と並行して作曲され1802年の初めにはほぼ完成に至ったと思われます。

作品31の3曲中、唯一4楽章制を採っていますが、第2楽章にスケルツォ。第3楽章にメヌエットという風変わりな構成となっており、初期ピアノソナタの平明さからは著しく発展しており、中期に相応しい充実した内容となっております。

ウィルヘルム・バックハウスが1969年のリサイタルでこのピアノソナタの第3楽章を演奏中に心臓発作を起こしそれが彼の最後の演奏会となりました。

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第1楽章
1

第2楽章
2

第3楽章
3

第4楽章
4

ベートーヴェン ピアノソナタ第18番♫~バレンボイム
ベートーヴェン ピアノソナタ第18番♫~アシュケナージ



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2017_01
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(Mon)08:07

ベートーヴェン ロンド・ア・カプリッチョ(失くした小銭への怒り) ト長調 作品129/Beethoven Rondo a capriccio "Rage over a Lost Penny" G-Dur Op.129

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作品番号だけを見るとベートーヴェン後期の作品のように見えますが、実際は1795~1798年に書かれた初期の作品で自筆譜には未完の箇所が多くあります。 ベートーヴェンの死後出版された初版に出版社のディアベッリが補筆したとされております。

有名な「失われた小銭への怒り」という副題はベートーヴェンが名付けたものではありません。 正式なタイトルは「alla ingharese quasi un capriccio」(奇想曲風なハンガリー風の)です。  副題にも「Die Wuth uber den verlornen Groschen ausgetobt in einer Kaprize」(奇想曲の中へぶちまけた失くした小銭への怒り)と書かれているだけでロンドという言葉は出てきません。

聴衆受けする曲のため良く演奏されますが、4分の2拍子で速度も速く、奇想曲でありながら節度を保った演奏が求められる点が難しいかと思います。

ベートーヴェン ロンド・ア・カプリッチョ♫~キーシン



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