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2016_02
10
(Wed)09:45

スクリャービン 12のエチュード 作品8/Scriabin 12 Etudes Op.8

スクリャービン(1872~1915)が22歳の時書き始めて翌年1894年に完成したこの「12の練習曲Op.8」は出版業者M.ベリャーエフがスクリャービンに出版を勧めたもので、ショパンの練習曲集を意識して12曲で1つのまとまりをなすように構成したことがベリャーエフにあてた手紙から分かっております。

ベリャーエフは出版の後スクリャービンのヨーロッパ各地への演奏旅行も企画しております。

特に右手のオクターヴの壮絶な旋律に始まる第12曲目は「悲愴」と称されスクリャービンが大変好んで演奏しておりました。

ショパンの作品10-12(革命)の練習曲との類似が指摘され、のち20世紀初頭のロシアが体験するあまたの出来事と結びつく反乱の精神が凝縮されております。

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Op.8-12

スクリャービン エチュード 作品8 全曲♫~ソフロ二ツキー
スクリャービン エチュード 作品8-12♫~ホロヴィッツ
スクリャービン エチュード 作品8-12♫~キーシン
スクリャービン エチュード 作品8-12♫~ベレゾフスキー
スクリャービン エチュード 作品8-12♫~スクリャービン

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ホロヴィッツ

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イーゴリ・ニコノーヴィチ


レッスン問い合わせ
2016_02
07
(Sun)08:42

スクリャービン 幻想曲 ロ短調 作品28/Scriabin Fantasie h-moll Op.28

スクリャービンの作品はショパン風のピアノ小品を数多く作った初期(~1981)、リスト・ワーグナーの影響を受け調性にとどまりながらも神秘和音を使い始め独自の作風を試みた中期(~1908)、そして自分の芸術を神秘主義的思想と結び付けさらに音と色彩の融合を目指した後期(~1915)の3つに分類されますが、「幻想曲」は1900年のピアノ曲でソナタ3番とソナタ4番の間に完成されたソナタ形式による単一楽章の作品であり、初期の集大成ともいえる壮大な曲想を持つ曲です。

ショパンや後期ロマン派的な濃厚な感情表現も多く見られますが、中期・後期作品で見られる深い神秘性も随所に見られます。

ロシアのピアニストには人気のある楽曲ですが、スクリャービン自身はこの曲を顧みることがなく、サバネーエフがスクリャービンの自宅のピアノで幻想曲の主題を弾いたところスクリャービンは「誰の曲だい?覚えがあるな。」と叫んだという逸話も残っております。

スクリャービン自身が20代前半で右手を壊したため左手に連続するオクターブの跳躍や広いアルペジオのパッセージが現れ技術的に困難な曲ですが、美しく流れるメロディなど魅力的な要素がちりばめられており、さらにリストやワーグナーの交響楽的な重厚さも合わせ持つ素晴らしい作品です。

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スクリャービン 幻想曲 作品28♫~ソフロ二ツキー
スクリャービン 幻想曲 作品28♫~リヒテル

参考ブログ
芸術とは何でしょうか?


レッスン問い合わせ
2015_12
09
(Wed)06:20

スクリャービン ピアノ・ソナタ第3番 作品23

MESSAGE
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ロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービン(1872~1915)の作品は20世紀ロシア・ルネッサンスに属しておりますが、それまでの伝統的で保守的な芸術感とは袂を分かち、新しい神秘的な思想で超自然的な創造活動を繰り広げた作曲家です。 

スクリャービンの初期の作品にはショパンの影響、ワーグナーとリストの影響が見られますが、その音楽言語は独創性に満ちておりライバルのラフマニノフと比べると非常に国際色豊かなものです。 またスクリャービンのイメージには常に脆さや非物質性といった素質がありそれはピアノの響きに反映されております。

スクリャービンは1897年8月周囲の反対を押し切って結婚をしパリへ行きます。 そしてそこでピアノ・ソナタ第3番を作曲します。 これは初期の作品ではありますが、モダニズムを目指したもので彼の過渡期の作品と言えます。 彼は後にこのソナタに「心理状態」という副題を付けその構想のイメージを形象化しておりますが、このソナタの暗く劇的な世界は周囲の反対を押し切って結婚した結婚生活の危機と精神的苦悩を反映していると言われております。

スクリャービンによるピアノ・ソナタ第3番の「魂の状態」の解説を掲載致します。

第1楽章ドラマティコ
自由で激しい魂は悲嘆と闘争の淵に情熱的に身を投げます。

第2楽章アレグレット
魂は束の間の仮の休息をとります。 苦しみ果てた魂は、是が非でも我を忘れ、歌い、花開く事を願望します。 けれども、軽やかなリズム、香ばしいハーモニーは単なる覆いに過ぎず、そこから透けて見えるのは不安に苛まれ傷つけられた魂です。

第3楽章アンダンテ
魂は流れに身を任せながら、優しく悲しい感情の海にたゆたいます。 愛、悲痛、おぼろな希望、言葉にならない物思い・・・。

第4楽章プレッソ
解き放たれた自然の嵐の中、歓喜にむせぶ魂は激しく震えます。 実存の奥底から湧き上ってくるのは、創造主である人間の猛々しい声、誇らしげに響き渡る勝利の歌。 だが、頂点に到達するにはあまりにも非力ゆえ、魂は時に慄きながら実存の奈落の底へと落下していきます。

スクリャービンのこの解説はスクリャービンの当時の心理状態を物語っておりますが、この作品以降スクリャービンの作風は形而上学的になってまいります。

ピアノ・ソナタ第3番は緩・急・緩・急の4楽章からなる本格的な多楽章ソナタで、全楽章を通じて劇的な演奏効果が貫かれておりピアニストには人気の高い作品です。

スクリャービン ピアノ・ソナタ第3番第1楽章♫~アシュケナージ
スクリャービン ピアノ・ソナタ第3番第2楽章♫~アシュケナージ
スクリャービン ピアノ・ソナタ第3番第3楽章♫~アシュケナージ
スクリャービン ピアノ・ソナタ第3番第4楽章♫~アシュケナージ
スクリャービン ピアノ・ソナタ第3番♫~ホロヴィッツ

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第1楽章

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第2楽章

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第3楽章

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第4楽章

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スクリャービン ピアノ・ソナタ全集CD~アシュケナージ

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スクリャービン ピアノ・ソナタ第3番CD~ホロヴィッツ

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スクリャービン ピアノ・ソナタ第3番CD~イーゴリ・ニコノヴィッチ


明日はリストのピアノ・ソナタロ短調について書きます。