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2015_09
09
(Wed)08:50

ショパン バラード1番を中心にバラード4曲

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モーツァルトのクラビコードとピアノフォルテ

以前ショパン(1810~1849)のスケルツォについては書きましたが今日はバラードについて書いて見ようと思います。 

まず最初にご紹介したいのが東京芸術大学名誉教授でいらっしゃる♪米谷冶郎先生♪の訳された「弟子から見たショパン」というご本です(音楽之友社)。 ショパンには多くの弟子がいましたが、この本はそのタイトルのように弟子達がショパンのレッスンを伝えたものを集めて出版された本です。
弟子から見たショパン 米谷冶郎訳
米谷冶郎先生は私が15歳からお世話になっていた関孝弘先生の先生ですが、私も関先生が夏休みにイタリアへ帰省されお留守の時はいつも米谷先生に東京の自由が丘のご自宅でレッスンをして頂いておりました。 ショパンのご専門の方で研究された楽譜など良く見せて頂きました。 大変お勉強になるご本ですので皆様にご紹介させて頂きます。

ショパンはピアニストとしても有名でしたが、ピアノの演奏法を研究することにも熱心でした。 ショパンの練習曲集はピアノで習得すべきテクニックのエッセンスが全て詰まっており、ピアノのテクニックの集大成の曲集だと言われています。

この本の中にはショパンが弟子たちへのレッスンの中でいつも言っていた事が書かれています。 例えばショパンは「ピアノを演奏する時にはピアノをオペラ歌手のようによく歌わせて決して鍵盤をたたかない」などと良く注意をしていたというような事などです。  録音技術もなかった頃ですので、ショパンの演奏を実際に聴くことは叶いませんが、当時のショパンが理想としていたピアノ演奏を知ることができる貴重な本だと言われています。

ショパン エチュード「革命」♫~エフゲ二ー・キーシン


もう一冊ショパンを歴史的な見地から検証されて書かれた本があります。 「ショパン パリコレクション」という本ですがこれは東京の府中の森でショパン展が開催された時に求めたものですが、書店でも売られているようです。以前この催しものがTVでも紹介されておりました。
ショパン パリコレクション
東京 ショパン展
パリ・ポーランド歴史文芸協会から提供された写真がたくさん載っている本です。

さてバラードですがバラードは良くそれぞれ単独で演奏されますが、ケヴィン・ケナーというショパンコンクール2位のピアニストの講座を東京池袋のヤマハで聴いた時、ケナーはスケルツォやバラードは4曲一緒に弾くべきだというお話をされていました。 時間的にもそれ以外の面からも大変な事ですが、確かにそうかも知れないと思います。
P1010353.jpg
バラード1番
バラード2番
バラード3番
バラード4番

私がバラードを初めて弾いたのは高校生の時で初めは1番を勉強致しました。 1番を聴いてシューマンが大変その曲を気に入ったので次の2番はショパンはシューマンに献呈したそうですが、シューマンは1番の方を気に入っていたようです。 1番は昨シーズンのフィギュアスケートのプログラムでも使われていましたので皆さん良くご存じだとは思いますが、you tubeにリンク致します。

ショパン バラード第1番 ト短調 作品23(1831~1835)~ツイメルマン

これはポーランドの国民的古典である「パン・タデウシュ」という愛国詩(1823)の中の「コンラート・ヴァレンロッド」という詩をショパンが読み霊感を受け作曲したと言われています。 コンラート・ヴァレンロッドというのはポーランドの英雄の戦士の名前です。 詩を書いたのはアダム・ミツキエヴィッチというポーランド文学を代表する国民的詩人ですが、ショパンはパリでミツキエヴィッチと面識があったようです。 作曲を手掛けた1831年という時代からしてもワルシャワ蜂起という歴史的背景が曲の中にあり、祖国のために戦う勇士の姿が想像されますが、ショパンは他のロマン派の音楽家達と違い音楽と文学や絵画を結び付けて表現する事を嫌がっていた作曲家ですので、あくまでもインスパイアされたというだけで標題音楽のように詩を描写しているわけではないのではないかと思います。

ショパンのバラードはみなポーランドの愛国詩人アダム・ミツキエヴィッチ(1798~1855)の詩をショパンが読んで霊感を受け作られたと言われており、コルトー版からの解説を書いておきます。

(次のミツキエヴィッチの詩を読んで書いたと言われています。)
1番~「コンラート・ヴァレンロッド」・・・ポーランドの英雄の名前
2番~「シフィテジ湖」・・・ミツキエヴィツチの故郷のリトアニアの摩の湖ヴィリ湖
3番~「シフィテジャンカ」・・・シフィテジ湖に住む水の精オンデイーヌ
4番~「ブドゥリ家の3人」・・・ブドゥリ家の3人の息子の話

ショパン バラード第2番 ヘ長調 作品38(1839)~ツイメルマン

この曲はシューマンへの試演ではヘ長調で終わっていたようですが、最終稿はイ短調で終わっています。 霊感を受けたといわれるミツキエヴィッチの詩は「夜な夜な音がするので湖を網ですくうと一人の美女がかかり、その美女の話によると昔湖のあたりはお城でロシア兵に囲まれ城中で包囲された領主の娘が祈ると町は沈み湖になり女子どもは花になりその花を摘むと死んでしまうと話しまた湖に帰って行った」というポーランドの伝説の物語です。

ショパン バラード第3番 変イ長調 作品47(1840~1841)~ツイメルマン

この曲の源流となったミツキエヴィッチの詩は「恋人の愛情を疑った乙女が水の精に化けて若者を誘惑しその誘惑に負けた若者は水の精に湖の中に引きずりこまれる」というファンタジックなお話です。 4つの中で唯一長調の作品です。 明るい優美な曲想はこの頃のショパンの生活の充実ぶりが表れているのではないかと思います。

ショパン バラード第4番 ヘ短調 作品52(1842)~ルービンシュタイン(楽譜付き)

この曲は4つの中で一番傑作と言われており技巧的にも演奏をするのに一番難しいと言われています。

ショパンのバラードはどれも3拍子系の非常にドラマチックな曲ばかりです。 バラードは物語という意味で、ドラマテイックな曲ですので、音楽からのアプローチだけでも充分そのドラマ性を感じ取ることができますが、上にご紹介したような詩を読むことで音楽を一聴衆として聴く場合にも、自分で演奏する場合にも、より具体的なイメージが湧くのではないかと思います。

ショパン バラード全曲♫~キーシン


細かい事はピアノを通したレッスンでないと文字だけでは限界がありますが、バラードのCDは数多く持っていますので一部ご紹介いたします。

門下のご家族の方でお聴きになりたい方は生徒さんを通して受付までお尋ね下さい。

キーシン 全曲
キーシン バラード4曲
ルービンシュタイン 全曲
ルービンシュタイン バラード4曲
コルトー 全曲
コルトー バラード4曲
ポリー二 全曲
ポリー二 バラード4曲
ミケランジェリ 第1番
ミケランジェリ バラード1番

明日は試験やコンク―ルで必ず弾かされるバッハの「平均律」について書いてみます。
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