芸術とは何でしょうか?
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私は今大学院で表現系という分野を専攻しておりますが、そこはピアノの方ばかりではありません。 声楽の方、舞踊の方、建築の方、絵画の方、彫刻の方など、ジャンルに関わらず何かを表現している人の集団です。 そこで自分の専攻する分野を通して表現する事とはどういう事かを分析し論文を書くという学部です。
私達は皆日々何かを表現致しております。 生きている人間で何かを表現していない人間はいないのです。 なぜなら表現するという事は「生きる」という意味だからです。 赤ちゃんでも何かを常に表現致しております。 寝たきりのご老人でも自分の意志はございます。 みな人間は生きている限り何かを表現しているのです。
さて少し難しい言葉になりますが、「共通感覚」という言葉がございます。 天才(ゲーテ、スクリャービン、カンディンスキーなど)はみなこの「共通感覚」をもっているそうです。 共通感覚を英訳するとコモン・センスとなりますが、普通現代ではコモン・センスというと「常識」と訳されます。 しかし実はもう一つ別の意味があるのです。
それは言葉で書く通り「共通の感覚」という意味です。 何に共通かというと「五感に共通」という意味です。 人間は何かを触れば必ず別の感覚も働きます。 例えば触って痛ければ怖いなどという恐怖心がおきます。 食べるものでも見てきれいな色なら食べてみたいと思います。 また色をみて音楽が耳で鳴る人もいます。 色をみて言葉が溢れてくる人もいます。 このように人間は五感の統合という働きを持っているおかげで「人間でいる事ができている」のです。
しかしこれは本人の意識しない部分での五感の働きです。 この働きをもっと本人が自覚している感覚を持っている人がいるのです。 その感覚を「共通感覚」と呼びます。 共通感覚を持つ人間は10万人に一人いると言われております。
ところで抽象画の画家にカンディンスキーという人がいます。 この人も「共通感覚」の持ち主だった人ですが、芸術を「精神の王国」にしようとし、そのためには芸術の総合化が必要だという構想を持っていた画家です。 その絵画は先入観のない誰が見ても惹きつけられるものがございます。
芸術はARTといわれますが、これは訳しますと技巧という意味です。 確かに芸術は何かを表現するための技巧を専門的に学んでいる学問ですが、この「知」の部分が偏重されますとカンディンスキーのいう「精神の王国」からは程遠い世界になってしまいます。
五感を認識して他者との融和をはかり最終はコスミックな世界(宇宙のように広大無辺な世界)に到達するのが芸術のあるべき姿ではないかと私は思います。
ちなみにcosmicはchaotic(無秩序な)の対義語で、orderly(秩序のある)やharmonious(調和のある)の意味もあります。
難しい事は参考の本を掲載致しますのでお読み頂ければと思います。

2002年カンディンスキー展図録

「共通感覚論」 中村雄二郎著 岩波書店

私は今大学院で表現系という分野を専攻しておりますが、そこはピアノの方ばかりではありません。 声楽の方、舞踊の方、建築の方、絵画の方、彫刻の方など、ジャンルに関わらず何かを表現している人の集団です。 そこで自分の専攻する分野を通して表現する事とはどういう事かを分析し論文を書くという学部です。
私達は皆日々何かを表現致しております。 生きている人間で何かを表現していない人間はいないのです。 なぜなら表現するという事は「生きる」という意味だからです。 赤ちゃんでも何かを常に表現致しております。 寝たきりのご老人でも自分の意志はございます。 みな人間は生きている限り何かを表現しているのです。
さて少し難しい言葉になりますが、「共通感覚」という言葉がございます。 天才(ゲーテ、スクリャービン、カンディンスキーなど)はみなこの「共通感覚」をもっているそうです。 共通感覚を英訳するとコモン・センスとなりますが、普通現代ではコモン・センスというと「常識」と訳されます。 しかし実はもう一つ別の意味があるのです。
それは言葉で書く通り「共通の感覚」という意味です。 何に共通かというと「五感に共通」という意味です。 人間は何かを触れば必ず別の感覚も働きます。 例えば触って痛ければ怖いなどという恐怖心がおきます。 食べるものでも見てきれいな色なら食べてみたいと思います。 また色をみて音楽が耳で鳴る人もいます。 色をみて言葉が溢れてくる人もいます。 このように人間は五感の統合という働きを持っているおかげで「人間でいる事ができている」のです。
しかしこれは本人の意識しない部分での五感の働きです。 この働きをもっと本人が自覚している感覚を持っている人がいるのです。 その感覚を「共通感覚」と呼びます。 共通感覚を持つ人間は10万人に一人いると言われております。
ところで抽象画の画家にカンディンスキーという人がいます。 この人も「共通感覚」の持ち主だった人ですが、芸術を「精神の王国」にしようとし、そのためには芸術の総合化が必要だという構想を持っていた画家です。 その絵画は先入観のない誰が見ても惹きつけられるものがございます。
芸術はARTといわれますが、これは訳しますと技巧という意味です。 確かに芸術は何かを表現するための技巧を専門的に学んでいる学問ですが、この「知」の部分が偏重されますとカンディンスキーのいう「精神の王国」からは程遠い世界になってしまいます。
五感を認識して他者との融和をはかり最終はコスミックな世界(宇宙のように広大無辺な世界)に到達するのが芸術のあるべき姿ではないかと私は思います。
ちなみにcosmicはchaotic(無秩序な)の対義語で、orderly(秩序のある)やharmonious(調和のある)の意味もあります。
難しい事は参考の本を掲載致しますのでお読み頂ければと思います。

2002年カンディンスキー展図録

「共通感覚論」 中村雄二郎著 岩波書店
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