リスト 2つの伝説 S.175

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モーツァルトのクラビコードとピアノフォルテ

リストの「2つの伝説S.175」は、リストがカトリックの聖人の偉業の伝説の話にインスパイアされ、1861年から1863年にかけてローマで書いた作品です。 この頃はリストは失望と心労による人生最悪の時期で信仰を深めており、1865年の53歳の時にはヴァチカン宮殿で下級の僧籍に入門致しております。 出版は第1曲は1865年、第2曲は1866年で娘のコジマ・フォン・ビューローに献呈されております。

第1曲は「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」というタイトルですが、そのタイトルの通り「森の小鳥に説教をするアッシジの聖人フランチェスコ」に感銘を受けリストがその伝説を音にしたものです。
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LEGENDES

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Chapitre16, " Petites fleurs de Saint Francois d'Assise" Paris1860

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ST. FRANCOIS D'ASSISE

小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ♫~アルフレッド・ブレンデル
小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ♫~ウイルヘルム・ケンプ

アッシジというのはイタリアのウンブリア州のペルージャにある都市の名前です。 カトリックのフランシスコ会の創設者の聖フランチェスコの出身地とされておりキリスト教の巡礼地でもあります。

聖フランチェスコ(1182~1226)はカトリックの修道士でフランシスコ会の創設者ですがイタリアの守護聖人でもあります。

小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコの伝説は「聖フランチェスコの小さな花」というフランチェスコの伝記の本の中に載っているお話です。 

「聖フランチェスコの小さな花」という本は14C末に完成し15世紀半ばに出版された名詞選で、フランチェスコの生涯の業績の中から選ばれた53の伝説が入っております。 その中の16章に「小鳥に説教するフランチェスコ」の話が入っております。

フランチェスコが旅の途中に道端の木立に止まる小鳥に感動し、姉妹なる小鳥に説教をするために野原の中に入って行きます。 地面にいた小鳥に説教をしていると木に止まっていた鳥も舞い降りてきて、説教が終わるまでおとなしく首をうなだれて聞き、説教が終わりフランチェスコが十字を切って祝福を鳥たちに与えると十字の形に鳥たちは飛び立って行ったという伝説のお話です。

小鳥たちにはマタイによる福音書6章26節の「空の鳥を見るがよい。まくことも、刈ることもせず、倉に取り入れることもしない。それだのに、あなたがたの天の父は彼らを養っていて下さる。あなたがたは彼らよりも、はるかにすぐれた者ではないか。」を引用され、「あなた方を造って下さった神様のご恩を深く感じなさい。」と説教したそうです。  1863年教皇ピウス9世がリスト宅を訪問した際、リストは教皇にこの曲を弾いて聴かせたという話です。
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3世紀 新約聖書(ギリシャ語) パピルス

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13C半ば 新約聖書(ラテン語) 羊皮紙



第2曲の「波の上を渡るパオラの聖フランチェスコ」もイタリアのパオラの聖フランチェスコが奇跡を起こした伝説のお話をリストが読んだりその絵を見たりしてインスパイアされ感銘からその伝説を音にしたものです。
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Chapitre35 de la vie de Saint Francois de Paule, par Giuseppe Miscimarra

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DER HEILIGE FRANZISKUS VON PAOLA "AUF DEN WOGEN SCHREITEND"

波の上を渡るパオラの聖フランチェスコ♫~アルフレッド・ブレンデル
波の上を渡るパオラの聖フランチェスコ♫~クラウディオ・アラウ

パオラの聖フランチェスコ(1436~1507)は第1曲のアッシジの聖フランチェスコとは別人でアッシジの聖フランチェスコよりも200年くらい後に生まれた聖人です。 パオラはイタリアの都市名でパオラの聖フランチェスコはリストの守護聖人だったそうです。

ジュゼッペ・ミシマッラ著「パオラの聖フランチェスコの生涯」を読んだり、リスト所有のシュタインレの線描画の複製を見たりして、聖人の「信じる事の強さ」にリストが感銘しインスパイアされ作曲した作品ですが伝説はミシマッラの本の第35章に載っております。

メッシナ海峡を渡ろうとしたパオラの聖フランチェスコのみすぼらしい身なりをみた船頭は聖人とは知らず聖フランチェスコとその一行に船賃を要求し、払えない聖フランチェスコの乗船を拒否します。 同行していた一人が聖人である事を告げると、「聖人であるのが本当なら奇跡を起こして海を歩いて渡れ」と言い残し船を出港させてしまいます。 主に祈りを捧げた聖フランチェスコは、舟はあると同行のものに告げます。 聖フランチェスコがマントを海に広げそれに祝福を与えるとマントは帆になり杖はマストになり小さな船ができます。 一行はその舟にのり詫びる船頭をしり目に先に岸に着いたという伝説です。

1975年にリストの弟子のゲーレリヒの蔵書の中から、管弦楽版の自筆譜スコアが発見され、1984年に出版されております。 ピアノ版とどちらが先か定かではありませんが、現代ではオーケストラ版の方が原曲ではないかと言われております。


明日はベルリオーズの「幻想交響曲作品14」について書きます。




プロフィール

谷真子 masakotani

Author:谷真子 masakotani
東京音楽大学卒業

ADRESS
奈良市学園前

ピアニスト谷真子公式サイト
http://masakotani.co
奈良市学園前 谷真子ピアノ教室 教室ブログ「musica」
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