2015_09
08
(Tue)07:49

アデリーナ・ララ(1872~1961)

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モーツァルトのクラビコードとピアノフォルテ

現在、博士課程前期課程で研究テーマとしている「シューマン(1810~1856)の幻想曲Op,17」について書きたいと思います。

シューマンの幻想曲は3楽章から成る30分にも及ぶ大曲で、同時代の作曲家F.リストに献呈された曲です。(1836~1838)
第1楽章ではベートーベンの歌曲「遥かなる恋人へ」からの一節が引用されていたり、この曲の作られた背景にはクララ・シューマンとのエピソードなどいろいろな意味がこめられています。

ベートーヴェン歌曲集「遥かなる恋人に寄す」作品38~ヘルマン・プライ
ベートヴェン歌曲
ベートーヴェン歌曲

私は論文と並行して、7月4日に芦屋Classic Salonで、全楽章を演奏致しました。
この曲をご存知ない方がおられました、you tubeの方に公開しておりますので、一度聞いて頂けましたらうれしく思います。

you tubeよりシューマン幻想曲ハ長調Op.17~(谷真子)
https://youtu.be/h8cSdwEnnzg

ロベルト・シューマンは書店の息子として生まれ、大変な文学青年であったようです。
シューマンはライプツイヒ大学で法律を専攻しました。音楽大学での専門的な教育は受けていないですが、幼少より個人レッスンを受けており、音楽への夢をあきらめきれず、音楽家を志しました。もともとはピアニストになりたっかったようですが、練習のし過ぎで手を壊したのは有名です。

超絶技巧として有名な作曲家は同時代のF・リストですが、意外にもシューマンの曲の中にも超絶技巧的な箇所がよく出てきます。
これは当時、超絶技巧で有名であったヴァイオリニストのパガ二-二に憧れ、意識したものと言われています。


ロマン派のピアノ作品は、音楽以外の芸術から影響を受けている作品が多いのですが、シューマンの場合はその中でも文学と結びついている曲が多く、ホフマン(1776~1822)の「クライスラー」(1814~1815)からインスパイアされた「クライスレリアーナ」(1838)などはその代表的な例です。

シューマン クライスレリアーナ~マルタ・アルゲリッチ
https://youtu.be/S91cK2Z3z2I

ロベルト・シューマンの奥さんであるクララ・シューマンは当時とても人気のあるピアニストでした。 小学生用の伝記物のシリーズの本の中にもよく登場する人物ですので、小さいお子さんでもご存じの方も多いかと思います。
そのクララ・シューマンは当時ヨーロッパ中を演奏旅行していましたが、レッスンをすることにも熱心で晩年多くの弟子を育てました。 クララ・シューマンの晩年の自宅でのレッスンの様子は本の中にも記録として残されています。

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3-%E3%83%A8%E3%83%8F%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%B9-%E5%8F%8B%E6%83%85%E3%81%AE%E6%9B%B8%E7%B0%A1-%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%84%E3%83%9E%E3%83%B3/dp/4622077272
クララはシュ―マンの曲をコンサートで自分が初演し、レッスンではロヴェルト・シューマンがどのように演奏するように言っていたかを弟子に伝えていたようです。 アデリーナ・ララはクララの弟子で、ララのシューマンの幻想曲の演奏は現在録音されているCDの中では最も古く、シューマンに一番近い人物の演奏ではないかと思いますが、残念ながらそのCDは現在廃盤となり手に入らないようです。

Adelina de Lara(1872~1961)CDジャケットより
アデリーナ・ララ
アデリーナ・ララ

シューマン アラベスク~Adelina de Lara
https://youtu.be/c3pbO-GSnE8

余談ですが、クララ・シューマンによるドイツ語での料理のレシピ集なども残っています。